原爆の理不尽さ

映画『夕凪の街 桜の国』を見てきました。そしたらまた原作の方も気になって、今さっき読み返したところです。改めて読んでみたら、原作と映画でちらほら違った部分もありました。
映画で印象に残ったのは皆実の言った「原爆は落ちたんじゃのうて、落とされたんじゃ」(うろ覚え)って言葉。自然現象ではなく、そこには人の意志があったんですよね。皆実は死ぬ寸前まで「落とされた」ということにこだわっていました。

原爆を落とした人はわたしを見て「やった!またひとり殺せた」とちゃんと思うてくれとる?

夕凪の街 桜の国』 P33

この世におってもええ」と思えたその日から死に向かっていく理不尽、それに対して必死に抗っているように思います。
皆実の甥の凪生は被爆二世であることを理由に、彼女の両親から付き合いをやめるように言われます。その後、彼女にあてた手紙の中でこう書いています。

ただ僕のぜんそくですが 環境のせいなのか 持って生まれたものなのかは 判りません 今はすっかり元気です 姉は今も昔も元気です

夕凪の街 桜の国』 P69

原爆投下は凪生が生まれる何十年も前のことです。それなのに、差別を受けてしまう辛さ。穏やかな文面に、そんな理不尽さに必死に抵抗する意志が表れていると思うんです。
これらの抵抗には強さを感じます。同時に悲しさも感じます。
こんなものを生み出してしまう原爆は絶対にその存在を許してはいけないと思うのです。
原爆は落とされました。そこには人の意志がありました。だから、人の意志で必ず原爆を無くすことができるはずです。

(文責 contack)