葬式と結婚式

残暑が厳しいといえ、朝晩はとても涼しくなった。秋雨前線が活発化して一日中冷たい雨が降っていると、あの厳しい暑さも恋しくなる。夏のさなかは嫌というほど汗を拭ったが、傘から落ちる滴に濡れるよりましと今となっては思えてくるから人間は身勝手、とりわけ「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ことを痛感する。
お盆のさなかに同僚が亡くなった。葬式は真夏の中の真夏、雲ひとつない青空の下行われた。海はひどく海水浴客で賑わうだろう晴天のなか、真っ黒な喪服に身を包んだ集団が死を悼んでいる。ぼくはなぜかその場の風景に見とれてしまう。海のような空の青、その下の大量の黒。青と黒のコントラスト。
「葬祭」の意は「葬式と祭り」だが、あまりにもきれいなこの風景はまさに「弔う祭」じゃないか。参列者は墨汁に身を浸したような、何色にも染まらない清潔な黒、祭壇は今日の主役を彩る真っ白な花の数々。役目を終え、旅立たれる、今日がクライマックスだ。黒服の一人は遺志をつぎ、決意します。でも上述のとおり、その固さは夏の太陽の下で溶けるアイスクリームなみなのです。自戒のうたとともに一歩踏み出す参院選後、秋の始まりです。

「同僚の死を悼むとともにする決意暑さと同じく忘れゆく長月」

九月前半、学生時代の友人の結婚式に参加。新郎新婦ともに同じ目標に向かってがんばった仲でした。長い距離を走るのが得意なふたり。助け合いながら長い道のりを進んで行ってほしいと思います。

「マラソンで抜いた抜かれたあの仲も伴侶の点ではゴールを譲る」

(文責 シアンクレール)